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気になる数字をチェック! 8 『4,500km』

Blog 2014年9月26日

部長のえ

2013年6月、ニュースキャスターの辛坊治郎さんと相棒の目の不自由なヨットマンが宮城県金華山沖1,200kmの太平洋上で救助された。この救助に使われたのが海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」。太平洋横断中のヨットが浸水して救命ボートで漂流しているとの連絡を受けた海上保安庁は、自前の装備では救助不可能と判断し、海上自衛隊に救助(人命救助に関わる災害派遣)を要請した。
US-2は4発プロペラ機で最大離陸重量47.7トン、航続距離は4,500km以上、着水できる波高は3mとなっている。実は現在世界で飛行艇を作っている国は3カ国しかないという。製造メーカーはカナダのボンバルディア社、ロシアのベリエフ社、日本の新明和工業だけとのこと。ボンバルディア社のCL-415という飛行艇は双発プロペア機で最大離陸重量20トン弱、航続距離2,426km、着水可能波高1.8m、ベリエフ社のBe-200という飛行艇は双発ジェット機で最大離陸重量41トン、航続距離3,300km、着水可能波高1.2mである。外洋での運用を前提としているのは新明和工業のUS-2だけ。
片道1,200kmを飛んで現場で捜索活動を行い、さらに4mに達する荒れる波間に着水して救助、離水して1,200kmを帰投するには、新明和工業のUS-2の性能がなければ不可能だったことになる。
波高が高い中でも離着水を可能にしているのは、そのSTOL(短距離離着水(陸))性能にある。フラップと圧縮空気を用いる動力式高揚力装置を組み合わせて時速90kmという極低速で飛行、短距離離着水が可能であるため、波高の高い中でも安全に降りられる。
このUS-2、四方を海に囲まれ、離島も多く海を跨いだ救助活動が多い日本ならではの航空機ということができる。また、改造して消火システムを搭載すれば15トンの水を吸い上げて火災現場で放水することができ、消防飛行艇としても運用できるそうだ。
さて、この「新明和工業」という名称をお聞きになられたことはないだろうか。エレベーター型の立体駐車場や、テールゲートリフタというトラック後部で荷物の上げ下げを行うリフト、産業用ポンプ類などで知られたメーカーであるが、案外、飛行艇のメーカーでもあることは知られていないかもしれない。
脈々と積み重ねられてきた飛行艇の技術もあるそうだ。あまり広く知られていない領域でこつこつと技術開発の努力を続けている人達がいることに気付かされた。何となく嬉しくなる。