北キャンレポート

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注目!若手Scientist 第3回 北海道大学大学院医学研究科生理学講座 助教 西出 真也 氏

『注目! 若手Scientist』。第3回は「北大若手研究者の会」世話人の代表、
西出 真也 歯学博士。

西出先生は札幌市のご出身。北大歯学部を卒業後、臨床医として小児歯科に勤務するかたわら同大学院歯学研究科へ進み小児歯科の研究を志すが、医学研究科の基礎講座へ出向したことで思わぬ道がひらかれることに・・・

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先生のご専門は細胞生理学。研究ターゲットは「サーカディアンリズム(概日リズム)」だ。

サーカディアンリズムとは、24時間周期の昼夜の変化に対応し、ほぼ1日周期で体温調節などの体内機能を自発的に変化させるリズムのこと。「体内時計」とも呼ばれる。例えば、花は、光や温度など外界の変化がなくても決まった時刻に花を咲かせることができる。マウスは、夜行性動物だが、1日中暗い部屋で飼育してもやはり夜間の時間帯に行動する。ヒトも、外界の変化に関係なく体温やホルモン分泌など体の基本的な機能が1日周期のリズムを示すことがわかっている。

1日周期のリズムには、「時計遺伝子」と「タンパク質」が深くかかわっている。時計遺伝子に保存された情報がDNAからmRNA(メッセンジャーRNA)に写し取られた後、その情報をもとにタンパク質を合成するが、その量が多くなるとタンパク質の量を抑えるようになる。やがてタンパク質が分解され数が少なくなると、再びタンパク質を合成するようになる。このようにタンパク質の合成と抑制のサイクルが1日のリズムを刻んでいるという。

体内時計は、体の様々な臓器や細胞にあり、複雑なネットワークとして存在する。体内時計のリズムは、外界の影響を受けやすく放っておくとバラバラになってしまうが、これらの働きを統合するのが脳の視床下部にあってぶれない強固なリズムをもつ神経核の「視交叉上核」である。
末梢器官(臓器や細胞)にある「子時計」は中枢(視交叉上核)の「親時計」に従属的であり、自律神経や血液循環を介し、視交叉上核から時刻合わせの情報を受け取っている。

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          体内の同調したリズム

西出先生の研究は、発達・成長期における体内時計のリズム分析が出発点。

マウスの様々な器官の時計遺伝子発現リズムを、リアルタイムで胎生期から成獣まで測定し、発達段階による差があるかどうかを検証していった。その結果、発達成長期は中枢の視交叉上核が刻むリズムも外界の刺激などの影響を受けやすいが、成長に伴い環境刺激への抵抗性を持ち、より強固になっていくことがわかった。
また、肺や腎臓など一部の末梢臓器は成長発達期においては、視交叉上核からの刺激が十分届いておらず、大人の臓器とはリズムが異なることを発見。体内時計は、生まれたときから確立しているのではなく、大人になるにつれてリズムの同調が強固になっていくというわけである。子供の生活習慣は少なからずその発達に影響を与えるといえそうだ。

現在は、細胞を生きた状態で時間的・空間的に捉えることができる「緑色蛍光たんぱく質(GFP)」あるいは「フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)」と呼ばれる蛍光バイオイメージング技術が解析の基盤。これを駆使して、ミクロな視点から一つ一つの生きた細胞を観察し、サーカディアンリズムの可視化に挑戦中。
体内リズムの「同調したリズム」や「バラバラなリズム」を解析し、リズムの同調が体内の機能低下を防ぐといったメカニズムに焦点をあてている。

また、小児歯科の臨床を担当されていた先生は、研究を歯科の臨床応用にも役立てようと考えている。最近では、子供の生活習慣と齲歯(虫歯)の関係について調査し、0歳から16歳までの被験者のデータを集め検証した。その結果、乳歯列期(乳歯のみの時期)の小児においては、夕食時刻、就寝時刻と虫歯の数との間に関係があることが認められたとのこと。現在は、歯髄の細胞の炎症反応に時刻依存性があり、夜になると炎症反応が強く起こることによって虫歯が広がりやすいのではないかと考え、炎症応答タンパク質を解析しているそうだ。

 

今後は、「サーカディアンリズムの意義を広めていくとともに、研究室に閉じこもっているだけでなく、社会応用を目指したい。」

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「北大若手研究者の会」世話人は、来年度にバトンタッチとなるが、引き続き積極的にかかわっていきたいとのこと。
何事にも真摯に向き合う誠実なお人柄を感じさせるインタビューでした。

 

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