北キャンレポート

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注目!若手Scientist 第1回 北海道大学大学院先端生命科学研究院細胞機能科学分野 助教 北村 朗 氏

『注目! 若手Scientist』では、若手の研究者を中心に研究内容を分かりやすくご紹介していきたいと考えています。第1回目は「北大若手研究者の会」世話人の代表、北村 朗 理学博士。

北村先生は兵庫のご出身で、京都大学では工学部に入学したものの『再生医科学研究所』に入り浸りになり、いつのまにか『細胞生物学』を専門にしていたという。研究室はiPS細胞でノーベル賞を受賞された山中伸弥教授の隣だったとのこと。「トイレでは何度もお会いしましたよ…」。

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現在のご専門は細胞生物学、生物物理学。とりわけ光による計測やイメージングを使うため共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡が解析の基盤になる。主に使っているのが蛍光相関分光法(FCS)という研究室の金城政孝教授が開発した分光法で、このほか蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)と呼ばれるイメージング手法等も使っている。

これを駆使して解析を行い、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、ハンチントン病などの神経変性疾患で見られるタンパク質の凝集についての研究を行っている。神経変性疾患にはアルツハイマー病、プリオン病などが一般にはよく知られており、アミロイドβというタンパクが悪さをすることが知られている。まさにタンパクが凝集体を作って毒性を持つ典型とのこと。ALSにおいて、タンパク質凝集がどうして神経細胞を死に至らしめるのかは分かっていない。サイズの小さな凝集体の方が毒性は強いそうだ。凝集体をほどく作用を見つけることで問題解決の方向性を見つけたいとのこと。

北村先生は「自分は医師ではないので、治療というよりは、細胞内の動態を理解していくことでジェネラルな(普遍的な)法則を見つけたい」という。

細胞の観察ではGFPと呼ばれる緑色蛍光タンパク質で細胞を光らせて観察する手法が一般的に使われているが、GFPの分子が大きいため小さなものを観察するのには限界があると思われていた。北村先生は、GFPではFRETのシグナル強度が分子の向きに応じて変化することを利用し、逆転の発想で凝集体の中に並ぶGFPの規則性を計測して解析する方法を考え出したのである。細胞を壊さずに凝集体を観察することができるようになった訳で、すぐに医薬品や治療法という訳にはいかないが、問題の解決に向けた新しいステップといえそうだ。

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(写真左)共焦点顕微鏡を操作する北村先生。 (写真右)『ALS関連変異を持つSOD1タンパク質を発現するHeLa細胞(ヒト由来の培養細胞)』の共焦点顕微鏡画像。緑色に光る変異型SOD1タンパク質が、青い細胞核の上部で凝集体を形成しているのがわかる。赤は微小管。

 

北大はイメージングの領域は強みを持つと思うが、機器が日進月歩で新しい機器を持っているか否かがサイエンスの進歩に直結するため、このところ最新機器を次々導入している京大や阪大が成果を上げているので、北大の地盤沈下を懸念しているのだそう。この分野、今や研究も「装置型」といえそうだ。

タンパクの構造解析や細胞の情報伝達、遊走制御など、近くの研究室との連携も可能性ではあるものの、それぞれが多忙であるため、うまく役割分担ができて各々の研究室にメリットのある方法を構築することが必要になりそうだ。まずは成果を上げて最新の機器の導入に繋げていくのが当面の目標といえそうである。

研究室の金城教授とは大学院生の頃から共同研究を行っていたので、日本学術振興会の特別研究員として北大に呼んでもらったとのこと。それ以来、まる5年北海道暮らし。「北海道の生活は?」と聞くと「暑くないのはいいですね、冬は寒いですけど…。でもまぁこんなもんでしょう」とのこと。

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何とも真面目なお人柄を感じさせるインタビューでした。「北大若手研究者の会」は、総合大学であるが故に研究科・学部を超えて研究者同士が知り合う機会が少なかったため2010年に発足した。相互の研究内容を知る研究交流セミナーを年2回開催しており、昨年末現在で51人の若手研究者が名を連ねている。今後もこの51名をはじめ若手の紹介をしていきたいと考えている。

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