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気になる数字をチェック! 第15回 『秒速 299,792,458 m』

「光は1秒間に地球を7周半する。」
有名な例えなので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。光の速さは299,792,458 m/s、つまり秒速約3億m(30万km)です。同じように五感で感じる音速は340.29 m/sですから、光のほうが音より約88万倍速い。遠くの花火の光が見えてから、音が聞こえるまで時間がかかるのも両者の速さに違いがあるからです。
実はこの光速、19世紀にはすでに約31万km/sというほぼ正確な値が測定されていました。一体どのように測ったのでしょうか。その方法をご紹介します。

1849年、地上で初めて光速を測定したのはフランスの物理学者アルマン・フィゾー(1819-1896)です。光源から出た光が、回転する歯車のすき間(凹部)を通って進み、9km先の反射鏡ではね返ってくる様子を観察しました。

第15回
フィゾーの歯車の実験 (参考:Newton別冊『光とは何か?』2007年, pp.72-73)
 

歯車の回るスピードが遅いときは、反射した光は行きと同じ凹部を通過して戻ってくるので、観測者の視界は明るくなります。しかしどんどん歯車の回転数を上げていくと、反射して戻ってくる光はあるところで歯車の凸部分に遮られ、観測者の視界は暗くなります。フィゾーはこの「観測者の視界が暗くなったときの歯車の回転数」を利用しました。つまり「往復で18kmの距離を進む光よりも速く、歯車の歯が動いたときの歯車の1秒あたりの回転数」から、光速を計算したということです。なんと見事なアイデアでしょうか。
歯車の歯の数は720個、求めた歯車の1秒あたりの回転数は12.6回であり、9kmもの空間を利用した大規模な野外実験だったことはわかっていますが、歯車の大きさなど詳細は不明です。

Hippolyte_Fizeau
アルマン・フィゾー
 

この実験ののち、同じくフランスの物理学者であるレオン・フーコー(1819-1868)やアメリカのアルバート・マイケルソン(1852-1931)によって回転ミラーを使った光速の測定が続けられ、その後、マイクロ波やレーザーの登場により光速の測定精度はぐんと上がりました。
正確に測定できるようになった光速は、現在では「メートル」を定めるためにも使われています。かつてメートルは、1799年から「子午線」の長さを、1869年からは「メートル原器(基準とする物差し)」を使って定義されてきました。しかし世界中で単位をより厳密に共有するため、1983年から「真空中の光の速さ」というより安定的な手法を使った定義に変えられたのです。古くから使われてきた「メートル」という長さは、現在は「真空中を光が299,792,458 分の1秒で通りすぎる距離が1メートル」と定義されています。これは光速の実験をしたフィゾーも想像していなかったことでしょう。
皆さんも日常生活の中で大体1メートルくらいのものを見たら、「この距離を光は3億分の1秒で通り過ぎるのだな」と思い出してみてください。光の速さ、そして約160年前に歯車でそれを捉えたフィゾーの功績、その後の多くの科学者の研究成果を身近に感じられるかもしれません。

(福井佑梨・2014年度北海道大学CoSTEP本科生)

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