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第21回「制振構造、1300年目の出会い」

奈良県にある法隆寺は世界最古の木造建築であり、姫路城とともに我が国で初めて登録された世界遺産(文化遺産)としても知られています。中でも、7世紀末頃(飛鳥時代末期)の建築と伝えられる五重塔は幾度かの修復を経てはいるものの、約1300年もの間、倒壊することなくその姿を現在に伝えています。

法隆寺
法隆寺五重塔

 

我が国では、奈良時代以降も多くの五重塔や三重塔が建てられましたが、火災や戦乱等による消失はあるものの、地震による倒壊の記録はほとんど残っていません。これら日本の多層塔が地震に強い理由については様々な要因が関わっているようですが、中でも塔の中心部に立てられている「心柱(しんばしら)」が大きな役割を担っていると考えられています。

心柱は、“柱”という文字は使われているものの、実際には塔全体を支える構造にはなっておらず、相輪(そうりん)といわれる最上部の金属部分を支えているに過ぎません。また、そもそもは宗教的な意味合いが強かったと考えられており、耐震性を意図して設置されたものではないようです。しかしながら、塔の最上層から最下層まで(塔によっては1層目の上部まで)貫いており、“団子の串”(平常時は最上部以外、塔本体とは接していません)のような状態となっていることから、各層の左右の揺れが大きくなったときに、閂(かんぬき)のように歯止めの役割を果たす他、塔本体とは別の周期で揺れることによって制振効果を発揮しているとも考えられています。飛鳥時代の技術者が塔の構造をどのように考えていたのかは今となっては知る由もありませんが、江戸時代においては心柱を釣り下げる構造としたものが出現しており、これは耐震効果も意図したのかもしれません。

skytree
東京スカイツリー

 

現代の高層建築においても、耐震性や耐風性は非常に重要な技術課題であり、様々な制振装置が取り入れられています。中でも、高さ634メートルと世界で最も高い電波塔である「東京スカイツリー」では、直径8メートル、高さ375メートルのコンクリート製円筒を中心部に設置し、塔本体とは別の周期で揺らすことで全体としての揺れを抑えています。この仕組みは、高層ビルに使われている「質量付加機構」という制振構造を応用した世界初の技術であり、期せずして日本古来の塔と似た構造になったことから、設計会社では先人に敬意を表して「心柱制振システム」と名付けたそうです。スカイツリーも、長く人の心と歴史に残るタワーとして存在感を示し続けてほしいと願っています。

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